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風俗にまつわる有名人のコラムコーナー

kaku-butsuカクブツJAPAN〜俺にも言わせてくれ〜

kaku-butsuにゆかりのある人物が、週替わりで、時に熱く、時にクールに風俗に限らず世の中(ニュース、カルチャー、スポーツetc...)について、語り尽くすコラムコーナー

放送作家・劇団「あんかけフラミンゴ」主宰 島田真吾

お笑い芸人
プチ鹿島

オフィス北野所属のお笑い芸人。時事、芸能などの事象を独自の見解で見立てる事から「時事芸人」「文系芸人」などと称される。マキタスポーツ、サンキュータツオらと共演のTBSラジオ「東京ポッド許可局」が大人気放送中。著書に「うそ社説」(ボイジャー)「思わず聞いてしまいました!!活字版」(スコラマガジン)など。

オヤジジャーナル最強コンビ!?東スポ&文春の「バケツ・リレー」に注目せよ。

2014/08/28(木)

お笑い芸人 プチ鹿島


私が最近提唱しているのが「オヤジジャーナルを楽しもう」です。
新聞の社説や政治欄、スポーツ紙、タブロイド紙、週刊誌など、世のオヤジが好んで読むものを「オヤジジャーナル」と名付け、そこで何が報じられているか野次馬する。
それら旧来のメディアを馬鹿にする前に、マスゴミなどと怒ったりする前に、まずウオッチしてみるのだ。そうすると、世の中のニュースや情報は「じつはオヤジが発信してオヤジが受信してるだけでは?」と思えてくる。意外とそれがマスコミの正体かもしれない、とも。
その中で今回紹介したいのはオヤジジャーナルのなかの組み合わせの読み方です。
是非知ってもらいたいのは【「東スポ」⇔「週刊文春」】の親和性の高さ。これだけメディアがたくさんあるのに、世の中には「東スポと文春しか報じてない」物件が結構あるのです。
そしてここが重要なのだが、東スポと文春が報じてから「しばらく経ったあと」にそのネタが一般化することがしばしばある。
今年で言うと、歌手のASKA(本名・宮崎重明)容疑者の覚せい剤逮捕の事件。
これはすでに昨年8月に文春がスクープしていた。週刊文春(2013年8月8日号)の「シャブ&飛鳥の衝撃 飛鳥涼は『覚せい剤吸引ビデオ』で暴力団に脅されていた!」という記事。覚えている方も多いだろう。
しかしその1週間前、実は東スポも報道していたのだ。昨年7月24日付で「スクープ 超大物シンガー 薬物中毒 吸引ビデオで闇社会から脅迫も」という一面見出し。
東スポは名前を伏せて「ミリオンヒット連発 ソロでも活動」というヒントを並べ、読者の「想像力」に訴えた。謎のミュージシャンらしき影イラストもあり、まさに「プロレスの歴史と歩んできた東スポ」らしい、妖しい魅力にあふれた記事。
そのあと文春がASKAの実名を出して書いたのだ。この東スポと文春による「アイス・バケツ・チャレンジ」ならぬ「アスカ・バケツ・リレー」。見事ではないか。
そして最新版が飛び込んできた。氷川きよし、である。
《元マネジャーに暴行を加えたとして、警視庁麻布署は21日、暴行容疑で、演歌歌手の氷川きよし=本名・山田清志=さん(36)を書類送検した。同署は認否を明らかにしていない。(略)同署は21日、元マネジャーの男についても、氷川さんの所属事務所に口止め料名目で「1~2億円くらい払えるでしょ」などとメールを送り、現金を脅し取ろうとしたとして、恐喝未遂容疑で書類送検した。》(MSNニュース・2014.8.21 )
このややこしい「事件」、じつはとっくに東スポと文春が記事にしていた。特筆すべきは、今回は東スポと文春はまるっきり反対の立場で報道していた。
まず東スポは4月29日付けで《氷川きよしが、元従業員から氷川の暴力行為を理由に「数億円を恐喝されている」》と報道。

ポイントを要約してみると、

・元従業員はわずか数か月で退社。すると事務所のスタッフに対して突然、メールを送りつけてきた。「氷川の暴力行為をばらされたくなければ金を出せ」と“口止め料”として、数億円もの金を要求してきた
・その男(元従業員)は新人なのに、仕事をサボるしよくうそをつくなど、とにかく周りのスタッフから見ても態度が悪かった。見るに見かねた氷川の制裁があったことは事実。
・氷川が「ハメられた可能性」が非常に高い。実はこの元従業員の背後で動く人物もいる?
という内容。
つまり東スポの報道によれば、氷川の制裁があったことは事実だが恒常的ではなく、元従業員の態度が悪かったから。氷川に同情的。
ところがそれから2日後の「週刊文春」5月1日発売号はまるっきり逆だった。「元従業員」の告発を載せている。
 「元従業員」の男性は昨年10月に入社。氷川のマネージャーとして働いていたら「うつ状態」になったと告白。興味深いのは東スポで報じられた「氷川の暴力行為をばらされたくなければ金を出せ」メールの話もしているのだ。
《あれだけSOSを出したのに、耳を傾けてもらえなかったので、とにかく氷川さんに謝罪してもらいたいという一心で「もう、絶対許せませんので、1、2億ぐらいほしいぐらいです」などという突拍子もないメールを送ってしまったのです。馬鹿なことをしたと、今では反省してます。》
東スポと文春が報じた氷川きよし問題。果たして真相はどちらなのだろうか。ひとつ言えるのは、氷川サイドと元従業員サイドで壮絶な情報戦がおこなわれていたことは確かである。まるでウクライナ情勢。
この事件、他のメディアはまったく報じなかった。世の中にはたくさんしがらみがあって書けないことが多いのかもしれない。何でも書いちゃう東スポと文春が特殊なのである。
そしたら今回の「氷川きよし書類送検」の報。またしても東スポと文春だけで報じられていたネタが「しばらく経って」一般化したのだ。
しかも「氷川きよしを暴行容疑で書類送検、元マネジャーは恐喝未遂容疑で書類送検」という、両紙が報じていた内容そのまま。読み比べていたからこそ私はわかりやすかった。
東スポ&週刊文春。この「タイガー・ジェット・シン&上田馬之助」みたいなコンビが書く次のネタはなんだ!?