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風俗にまつわる有名人のコラムコーナー

kaku-butsuカクブツJAPAN〜俺にも言わせてくれ〜

kaku-butsuにゆかりのある人物が、週替わりで、時に熱く、時にクールに風俗に限らず世の中(ニュース、カルチャー、スポーツetc...)について、語り尽くすコラムコーナー

第5回は、レギュラーでお願いしているAV監督、鎗ヶ崎一さんです。

AV監督
鎗ヶ崎一

「超高級ソープ嬢」シリーズなどの主観映像による風俗物や、「SOD女子社員」シリーズなどのバラエティ物を得意とする。単体女優さんをキレイに撮る事にも定評がある。 業界一のサッカーフリークとして有名。

Jリーグとセルジオ越後と崔洋一、そしてテレビ

2014/3/20(木)

AV監督 鎗ヶ崎一


今回は、壇蜜とレディーガガについて、ちょっと華やかな話を書こうと思っていた・・・

しかし、書き始めた3月13日(木)に、それは起きた。
J1第2節の浦和対鳥栖戦で、浦和サポーターが「JAPANESE ONLY」という差別的に取れる内容の横断幕を掲げた問題にJリーグが処分を発表した。
内容は、けん責と23日の清水戦を無観客試合で開催する事。無観客試合は、Jリーグ史上初めての事だ。

Jリーグも、こよなく愛するサッカーキチガイの私にとって、これは、紛れも無い事件で、この件については、何をおいても書かない訳にはいかない。しかし、この問題には、サッカー、日本、人種差別、メディア、SNS・・・色々な要素が混在しており、私の手に負えるものでは無いのも、重々判ってはいる。ですが、短い期間の中で考えた、1人のサッカーキチガイの混乱中の考えとして、読んでいただきたい。

埼玉スタジアム2002の内部の入り口に張られた(ピッチに向かって、張られてはいない)「JAPANESE ONLY」。この横断幕の画像を見た時、私はまず、真っ先にこう思った。「日本人だけで戦え!」という意味で、浦和が今季から獲得した李忠成選手に対するフロント、あるいは個人への非難。そして、嫌な気分になった。しかし、チョット待てよ、とも思った。李選手は、ご存知の通り、すでに帰化した日本人なのだ。

それを思うと、浦和は今、マルシオ・リシャルデス選手が怪我の為ブラジルに帰国中で、李選手も含め、ベンチに入っている選手は、日本人だけな訳で、「日本人だけで戦おうぜ!」という意味なのかもな、とも思った。印象はガラリと変わる。深読みすると、強力な外国人選手をなかなか獲らないフロント非難なのかもと。

とにかく、この横断幕は浦和サポ限定のメッセージだと思った。実際は「外国人観光客お断り」という意味だったらしいが。ただ、ただである。「JAPANESE ONLY」という言葉が持つ力は、強いし、重い。少なくとも軽はずみに使ってはいけない言葉である事に、変わりは無い。Jリーグに詳しくない人には、字面だけ見たら、差別的な発言と取られても、全く弁解の余地が無いと思う。張った本人は、スタジアム(我が家)にいる、レッズファンだけが見ると思ったのだろう。SNSでの拡散の威力を完全に舐めていたのだろう。いきなり、PCやスマホでこの画像を見た世の人たちは、ビックリしたと思う。そして、イヤな気持ちになったと思う。

だから、今回のJリーグの処分を私は理解するし、その対応の早さと、チェアマンの決断は、大いに支持する。軽はずみな行動をした者、横断幕を張った者は、猛省しなくてはいけないと思う。

でも、でもである(混乱中の為、「ただ」とか「でも」とかが多くてすいません)
でも、元来、上から罰則とかを一方的に決め付けられる事が、とにかく嫌いな私は、何か少しだけモヤモヤ気持ちが残ったのも、正直な所だった。

そのモヤモヤは何なんだろう。決まった処分には本当に納得している。それはいい。
違和感は多分、これからの事だ。これから先の事___。
これから先、全てのスタジアムで、ちょっとだけ自由の在り方が変わるのではないか。
目に見えない者に縛られると言うか、何かを行動したり、発言する時に、どこか自主的に規制をかけてしまうのではないかという心配だ。ふと、何かに似ているなと思った。
そうだ、それは今のテレビだ。

危なそうな事、危なそうな発言を自主規制する今のテレビのつまらなさ。
これから先、もしもリーグからの規制がどんどん厳しくなっていったら、Jリーグはテレビと同じ道を歩んでしまうのではないか・・・。これから先のチェック、それがJリーグを愛する私たちの義務なのではないか。

今回の問題で、短期間ながら色んな人と話をし、色んな意見を読んだ。その中の一つ、セルジオ越後氏のコラムを抜粋して紹介したい。

人種差別行為が言語道断であるのは間違いない。僕は日系ブラジル人2世だから、余計によく分かっているつもりだ。差別のない国なんて世の中に存在しないし、動物である人間の本能として、自分の群れ以外に警戒心を示す、新しい血を拒むというのもあるだろう。悲しいがこれは事実だね。

『JAPANESE ONLY』という幕がどのような意図で掲出されたものかは分からないが、その掲出意図に関わらず、差別的であると受け手に判断されるものだったことから、今回の処分に至った。巷の声も、「重い罰を」というものが大半だったと思う。他のファンやサポーターの意見、海外も含めたメディアの反応もあって、村井チェアマンは強い態度と罰を示したのだろう。人種差別に対する意志としては妥当なところだ。

ただ、一方的な世論が出来上がっている中で、一つ言っておきたいこともある。僕は浦和の内部事情も、ゴール裏の雰囲気も知らない。だからあの幕の意図も想像しえない。あくまで客観的な事実だけで見れば、どの国の誰に向けられたものかもはっきりせず、「日本人選手だけのチームになってほしい」という希望の表出と捉えることもできなくはない。サッカーのことを全く知らない裁判官が裁いたら、判定はどうなるかな。スペインのアスレティック・ビルバオはバスク人だけで構成されているチームだけど、彼らが「オレたちはバスク人だけ!」と主張したところで、何も差別ではないよね。つまり、「JAPANESE ONLY」という言葉自体に罪はないということだ。

これから「JAPANESE」とか「日本人」という言葉を使う時は、みんなビクビクするだろう。問題が必要以上に大きくなり、社会主義国の言葉狩りのようになってしまうのではないか、そんな心配も生まれる。いずれにせよ、この一件は損以外の何ものでもないね。

何度も書くが、今回の処分を私は支持する。
ただ、これから先、どんどんJリーグが窮屈な所になっていくのは嫌だ。
昔、テレビでこんなシーンを見たのを思い出した。

1993年、映画「月はどっちに出ている」と言う在日コリアンのドライバーを巡るドラマで、各種映画祭の監督賞を総ナメにした崔洋一監督が、ある映画祭の表彰式で喜びのコメントをしている時だ。崔監督の師匠にあたる大島渚監督がほろ酔いで近づき、「崔!お前良かったな、在日で!在日じゃなきゃ、この映画撮れなかったよ。本当に良かった、在日で。」崔監督の頭を撫で回しながら、大声で言った。崔監督も、嬉しそうに笑っている。これがワイドショーで流れた。スタジオで文化人達が、微笑ましそうに笑ってる。

こんな事もあった。日韓ワールドカップが近づく中、インタビューを受けていた崔監督がオフレコで叫んだ一言がOAされてしまった。
「日本も共同開催が嫌だとか、ゴチャゴチャ言ってないで、とにかく、サッカーで韓国に勝ってみろよ!」
この頃のテレビが、良いとか悪いとかは別にして、昔のテレビは本当に自由でおもしろかった。
Jリーグの今後をちゃんとチェックしていこうと思う。セルジオ氏が言うような、言葉狩り的な事が進み、それに敏感になりすぎたフロントやサポーターがどんどん自主規制を始め、キレイ事が溢れ、安全で安心だけど、全くおもしろくない。そう、まるで今のテレビみたいなサッカースタジアムは、本当にゴメンだ。

横断幕を書いた者は、こんな大騒動になるとは知らず、軽い気持ちで張った「JAPANESE ONLY」。
このおかげで一番割に合わないのは、何と言っても無観客試合の相手、清水エスパルスだろう。ホームで戦う浦和にとって、サポーターの強烈な声援が無い無観客試合は、不利だと考えるのは違う。

選手にとっては、味方サポーターはある意味で敵チームや敵サポーターより、時に恐い存在だ。みっともない負け方や、致命的なミスをすると、何万人ものサポーターからブーイングを浴びせられる。そんなプレッシャーも受けず、ある種、罰ゲームの中、負けて当たり前と開き直って、のびのびとプレー出来る浦和は清水にとって、厄介なものになるだろう。何しろ、なんで何の罪も無い清水が、この罰ゲームに付き合わなくてはいけないのか。ここまでJ1第3節を終え、浦和の2勝1敗。清水1勝2敗で迎えるこの試合、もしも清水が勝ち点を取れなかったら、それはかわいそうすぎる。
これだけでも、横断幕を張った者の罪は本当に重い。

色々とツッコミ要素満載でお送りした、感情先行の勢いだけで書いたコラム。そろそろ、まとめます。

色々書いてきましたが、Jリーグは言っても、所詮エンターテイメントです。興行です。
こうなったら2014年3月23日のJ1第4節“史上初の無観客試合”浦和レッズ対清水エスパルス戦を楽しみましょう。サッカーを普段あまり見ない人も是非、一生に一度しか見れないかもしれない試合(現象)を目撃しましょう。

この試合、私も、つまらなくなって、余り見なくなった“テレビ”で生で見届けます。
なにしろスタジアムは、その周辺も入場禁止らしいので、この日はさんざん文句ばっかり言ったテレビだけが頼りだ。
こんな時は、浅田真央選手の時も思ったけど、ネットじゃダメなんだよな。生でテレビなんだ。今度、じっくりテレビの話も書きます。それでは、ありがとうございました。