SP企画

風俗にまつわる有名人のコラムコーナー

kaku-butsuカクブツJAPAN〜俺にも言わせてくれ〜

kaku-butsuにゆかりのある人物が、週替わりで、時に熱く、時にクールに風俗に限らず世の中(ニュース、カルチャー、スポーツetc...)について、語り尽くすコラムコーナー

堺コテツ

kaku-butsu SOD風俗調査団員
堺コテツ

テレビ番組、博覧会の映像、イベント映像、音楽のプロモーションビデオ、コマーシャルフィルム、AV、そして映画などを本職にしているクリエティブな団員さん。クリエティブに捧げる並々ならぬ情熱と団員いち映画好きのコラムを是非、一読ください。

高倉健さま、菅原文太さま、心よりご冥福をお祈りいたします。

2014/12/18(木)

堺コテツ


高倉健さんが亡くなりました。
菅原文太さんといい、かつて銀幕で、裏世界の人間ばかり演じていた方が亡くなると、
どうしてこんなに寂しく思うのでしょう。 セリフを読む事だけが演技ではなく、
存在そのものが演技だった人です。 もう、あんな役者は日本にはいません。
今日は、敬意を表して、私がかつて一度だけ高倉健さんとお仕事をさせていただいた時の事を。。。

もう20年以上も前、さるコーヒーメーカーのCM撮影で、助監督をした時のことです。
私は、ペーペーの助手で、ただの使い走りでした。

「お前、明日は衣装合わせをホテルオークラで18時からやるからな。 
昼からスタイリストを手伝ってやれ。」
と監督に言われ、行ってみると、2トントラックが3台待ち構えておりました。
「この中に衣装が入っているので、ホテルの部屋に運んで、並べて頂戴!」
40がらみのスタイリストの声が飛びます。

部屋はスイートルームで、3部屋とってありました。 そこに車ごとに、全部でなんと150着もの
衣装を運んで、部屋中の壁にロープを張って、ハンガーに吊るすんですね。
たった、30秒のコマーシャルに、150着ですからね。 
当然、CMで使うのは、その中の1着だけです! 2か月がかりで、スタッフ7人で集めたそうです。
似たような白いシャツの袖のボタンがちょっとだけ違って
いたりとか、同じ黒のスーツでも微妙に違ったりとか、。。。ははは、 ですね。 
集める労力や費用を考えただけでもゾッとします。

各部屋に衣装を綺麗にハンガーに掛け、レイアウトするのに5時間かかりました。
10月だというのに、もうみんな汗だくで、必死になっての5時間でした。

さて、18時。部屋の中には、クライアントを含め、15人くらいのスタッフが緊張しまくって
高倉健さんを待っています。
そこに、やって来ました、銀幕オーラを背中に背負って、世界のケン・タカクラです。
取り巻きを5,6人連れて談笑しながらの登場です。 テーマ曲が聞こえてきそうです。

で、来るなり一言、、
「あ、衣装は監督さんにお任せしますよ。」

一同、ははーっ、てな感じです。文句を言う人なんてひとりもいません。
みんなホっと胸を撫で下ろすだけです。

これを無駄と思うなかれ。これで気持ちよく仕事が運べば、ここで使う何百万なんて安いもんです、、、
なんていう考え方が、広告業界の常識だったんですね。  つまり儀式なんです。

さて、実際の撮影は、2週間後に都内のスタジオで行われました。もちろん高倉さんは、
終始笑顔で和やかなのですが、撮影スタッフはピリッ、ピリッです。
私も徹夜ということもあり、監督に「ボケッとすんじゃねえぞ!」と怒鳴られまくりで、 なんか吐きそうでした。

そして午後3時を回った頃でした。
「これ高倉さんからです」 とドリップしたコーヒーが運ばれてきたんです。
健さんの大きな声がスタジオ中に響きます 「みなさんお疲れ様です。ちょっと休んでお飲みください」
スタジオには100人ほどの人間がいたのですが、その全員にです。
私のようなペーペーペーにまでです。 まさにホっとひと時でございます。
スタジオ全員、ケン・タカクラのファンになった瞬間です。

巷間語られる、高倉健の好人物像はホンモノでございます。
心よりご冥福をお祈りいたします。 合掌。

高倉さんを追うように亡くなられた菅原文太さんともお仕事をさせていただいた
事があります。 菅原文太さんには、高倉さんほどの取り巻きの方はいなかったのですが、
とてもいい好々爺という感じで、終始穏やかなおじいちゃんでした。

ただ、あの堀の深いお顔は、どこから見ても堅気のおじいちゃんには見えないオーラが
ハンパなく、話すたびにチビリそうでした。
心よりご冥福をお祈りいたします。 合掌。