SP企画
風俗にまつわる有名人のコラムコーナー
kaku-butsuカクブツJAPAN〜俺にも言わせてくれ〜
kaku-butsuにゆかりのある人物が、週替わりで、時に熱く、時にクールに風俗に限らず世の中(ニュース、カルチャー、スポーツetc...)について、語り尽くすコラムコーナー
kaku-butsu SOD風俗調査団員
伊勢竜太郎
SOD覆面風俗調査団員 として、特に25歳〜40歳くらいまでの「お姉さん」「OL」「人妻」をメインに調査に励んでいる。容姿よりも雰囲気やテクニックを重視し、受け身派。エロいお姉さんにエロく舐められるのが好きで、その感動を分かりやすく伝えることをモットーとしている。
読んだら腹が鳴る!
この季節に読みたい「食欲をそそる文学」ガイド
2014/10/9(木)
kaku-butsu SOD風俗調査団員 伊勢竜太郎
調査団員の伊勢竜太郎と申します。
ふたたびkaku-butsuでコラムを書かせていただくことになり、何を書こうかと色々思い悩んだんですが、結局私には文学/小説のことしか書けません。なので今回も文学のことを扱いますが、ヘビーな内容の小説を紹介した前回に較べて内容はぐっと軽くし、気軽に読める作品を扱います。読書の秋ということで、ぜひkaku-butsuファンの好事家の皆様が本を選ぶときの一助になれば幸いです。
今回のコラムでも、前回に引き続き文学作品をとりあげてみたいと思いますが、季節柄、とりわけ食欲をそそる「食いしんぼう万歳」的な三作品をご紹介したいします。基本的に作家は食いしん坊だと思っていますが、そのなかでもこの三人は度を超えた、ちょっとヤバいくらいに食に偏執している人たちといえます。それゆえにページをめくっているとメチャクチャ腹がへってくるんです。そう、まるでkaku-butsuで風俗への異常愛が感じ取れるレポートを読むと風俗に行きたくてたまらなくなるのと同じです。
なお、小説と食と聞いて多くの方が(特にご年配の方が)まず思い浮かべるであろう池波正太郎や北大路魯山人などについては、あえて今回は取り扱っていません。ちょっと有名すぎますし、スタンダードで落ち着いたグルメ感がするからです。
そうじゃなくて、グルメを超えたアホなくらいの「食べ物中毒者」の本を紹介します。誰もが知ってる大作家ですが、食のこととなると、はっきりいって狂ってます。でも、誰もが性癖と同じく自分独自の変わった食癖を持っていると思いますし、背伸びして「至高の料理を召し上がる」のではなく、それよりも「好きなメシをがっつり食う
ほうが美味いと思いませんか?
本はどれも容易に文庫本で手に入るものばかりを選びました。ぜひ稀代の変態でならした大作家達がなりふりかまわず食と向き合った以下の作品を読んでいただいたうえで、腹が鳴ったらkaku-butsuの「余韻メシ」を見て、胃袋にガッツリかきこんでいただければと思います。
色川武大「喰いたい放題」
あの麻雀放浪記でおなじみ、伝説のギャンブラー阿佐田哲也の別名義である色川武大。雀聖とも呼ばれるほど今なおリスペクトされ、圧倒的に雀士として有名ですが、色川武大名義では意外と純文学の作品も書いたりして賞をとったりしているんです。彼のエッセイがまた秀逸で、そのなかでも食にまつわるものは特に最高です。
彼は「ナルコレプシー」という奇病を患っていて、睡眠のリズムが滅茶苦茶になるこの病気のせいで、どんな時間と場所だろうが発作的に眠ってしまう反面、睡眠の持続時間は少なく、つまり24時間ずっと少し寝ては起き、寝ては起きを繰り返します。時間感覚が乱れ、腹が減れば食事をするようになり、なんと一日6食の生活だったそうです。
このエッセイ集は、身体が悪く闘病しながらも深夜二時にカレーを食い、さらに明け方にステーキを焼いた、というような豪快エピソードから、地方旅行記、蕎麦や中華、もんじゃといった庶民的な店へのこだわり、戦時中の食糧事情まで、作者の等身大的な「メシ談義」が適当なゆるさで進行していて、実に読んでて気持ちいいんです。米飯に対する愛情が特に心を揺さぶります。
☆お気に入りの一文☆
「何かを喰い終ったときほど不愉快なものはないので、腹は突っ張らかり、涙と鼻汁があふれだし、喉が渇き、胸がやけ、そのうえもう喰えないという絶望感が重なる。腹を空かしていたときがなつかしい。腹を減らして、何かが喰いたいと思っているときが天国である。
内田百閒「御馳走帖」
続いては、夏目漱石の門下生という明治生まれの大御所の作家、内田百閒先生の名随筆を紹介します。写真なんか見てもずいぶんと威厳がある感じがして、取っ付きにくいと感じられるかもしれませんが、実はこのオヤジ、「超ダメ人間」なんです。作品(随筆が多い)を読んでいると、びっくりします。用事がないのに夜行列車に乗って旅に出ます。金遣いが荒すぎて借金まみれですが、それなのに贅沢三昧をして、威張りちらしています。こだわりとわがままが、とにかくすごいんですね。ずいぶん格調高い文体のわりに、実はぜんぜんくだらないことを書いているという、その気の抜けた感じが何ともお茶目な作家です。
この本を読んでも、食べることと飲むことが大好きだった彼の、食事に対する偏屈な愛情が馬鹿馬鹿しいまでに詰まっています。出版された年は戦時中で、食べ物すらろくに手に入らないご時世だったのにもかかわらず、時代が変わっても輝きが失われず食欲をそそられる文章を書くのは、よっぽど食いしん坊なんだなと改めて感心してしまいます。
☆お気に入りの一文☆
「『内田のヤツ、貧乏だ貧乏だとぼやいてゐるが、あの野郎、家で毎晩カツレツを七八枚喰らひ、人が来れば麦酒を自分一人で一どきに六本も飲んで、その間一度も小便に立たないとほざいている。それを自慢にしてやがる、あん畜生』 そんなにぼろくそに云はれなくてもいいが、しかし丸で身に覚えのない事ではない。」
開高健「最後の晩餐」
やはり、食といえば開高健先生の右に出るものはいません。彼はおよそ日本史上最強の「食のモンスター」といってもいいと思います。すごいのは、ただのエッセイストではなく小説家としても超一流で、それも極めて文学的価値が高い名作を残しているところです。
だから食についての百科事典といってもよいこの名作エッセイを読んでいても、その圧倒的な語彙力、表現の豊穣さに溜息が出るほどです。ありとあらゆる料理は勿論、古代中国の人肉食からペットフード、非常食まで知識も底なしに豊富で、次から次にエピソードが出てきて、そのすべてが面白い!私は開高健というのはまさしく「森羅万象を食いつくした」ような作家だと思います。腹と頭がつながり、胃袋が知識で埋められるようです。この本はまさに彼が世界を食いつくしたといってもいい、究極の食談です。
なお開高健といえば、kaku-butsu読者にはおなじみ、集英社の週刊プレイボーイ誌に「風に訊け」という連載を持っていたことでも有名ですが、その連載第一回目の冒頭の文章が、本当に素晴らしいので以下に紹介しておきます。
「開口一番。
若者は旅をせよ。
旅に出る時間と金がないのなら、
体はその場において、精神だけの旅をせよ。
旅に出たら、
地面に近く暮らすこと。
まず市場へ行ってみよ。住民の中に入って。
その地の生活に触れなくては、旅は旅ではない。
それから、
娼家へ通え。娼婦の肌と声とが人生を教えてくれる。
人生の大学は、市場であり娼家である。」
どうですか、素晴らしいですよね。私も開高健のこの教えを忠実に守って、日々商店街の八百屋に通い、そして風俗に通い人生の勉強に精進しております。
皆様も読書の秋、食欲の秋、風俗の秋ということで、腹が鳴る本を読み、うまい食事で腹を満たし、ぜひ風俗ライフをもっと充実させてください!!
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